属性なんて気にしなくていい-古橋秀之『ある日、爆弾が落ちてきて』

 

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

 

 

涼宮ハルヒの憂鬱』と同じ2005年に出版された本である。

ライトノベルのキャラクター小説性を一気に決定づけたハルヒは、キャラの属性という物を非常に上手く活用して作品を作った。キャラが先か属性が先か。タグの集積体のようなキャラづくりを自覚的に成し遂げ成功させたハルヒは、その点において未完ながらも今のラノベの古典と呼んで遜色ない貢献をしている。が、その一方でハルヒの後続たちは、その方向性を強め、属性的なキャラがただ戯れるのみの作品を生み出しさえし、こうした作品に拒否反応を示す向きもある。

 

キャラ小説というものは基本的にシリーズもので、一話完結型の短編、これとはどうしても馴染めない。理由は簡単で、短いからだ。むやみやたらにペタペタ属性を貼りつけたところで短いからあまり活きない。むしろ紙面の余裕が徒に無くなるのみで、それよりも筋を優先させなければならない。もちろん人物を疎かにしてはいけない、バランスが肝心だ、という具合にラノベと言えど、ふつうに正攻法でいかなければならない。

 

その点標題の『ある日、爆弾が落ちて』はふつうの小説だ。小説としてのふつうの正攻法を成功させた作品で、ライトノベルと呼ぶのに相応しい衒いの無い軽さはむしろ小気味良く、それでいてしっかりと余韻を残してくれる。ツボを上手く押さえている。

 

かきかけ