巨乳の取引先担当が辞めた話

昨日の話。仕事の話。

 
 
小生はとあるメーカーで調達の業務を行っている。
どこで耳にした話か分からんが文系で新卒入社した者の8割は営業になるそうだが、その一方で小生は珍しく営業される立場として社会人をスタートした。つまり「お客様」になるわけで、どどーんと踏ん反り返って取引先の営業を苛めていれば良いのかと言えばもちろんそれは違う。いわゆる材料費を極限まで圧縮する為、無数にあるデータと睨めっこしながらあの手この手で交渉、交渉、交渉。また部品が納期遅れとなれば、ひたすら調整、調整、調整。場合によっては取引業者の工場まで飛んでいき、「部品貰えるまでは帰りません」と無茶苦茶なことを言わなくてはいけない。また不具合などで費用が発生したら、その押し付け合いを業者と演じ、泥沼のバトルを繰り広げなければならない汚れ仕事もあり。
1年目は何も分からないなかでそういうことを全部やらなければならなかったので死ぬ思いだったが、最近は慣れたこともあり以前と比べてそれなりに楽しくやれている。
 
 
営業されるわけなので、取引先の色々な会社の人間と会う。数にするとざっと1年間で200以上も名刺を交換した。全員の顔を覚えている自信はないが、一口に営業と言っても、老若男女美醜痩太問わず色々な人がいる。話し方一つとっても、元気よくハキハキしゃべる人もいれば、物静かで必要最低限しかしゃべらないようなタイプもいて千差万別。塾講師をやっていた時、来る生徒が想像以上に多様であることに驚いたのと同様に、営業と言っても一概に限定されるものではないようだ。
1回しか会わない人もいれば、毎日顔をつきあわせて打ち合わせするような人もいる。あっさりと辞めていってしまう人もいる。
 
 
昨日も一人、退職するということで、挨拶に来た営業担当がいた。歳は26~27ぐらいの若い女性の営業で良く仕事の出来る方だった。
容姿自体は顔もでかく取り立てて美人というでも無かったが、独特の爽やかさと色気がブレンドされたたたずまいに、同僚の中ではファンも多かった。明るくハキハキとしながらも女性としての立ち居振る舞いはしっかりと残しながら、何より巨乳であった。FかGか。姿勢も良いので申し分なく強調されるそれに対して、悲しきかな視線のオートフォーカス機能を強制的に解除して、胸ではなく顔を見る、しかしながらも目の端ではしっかりと凝視してしまっている自分に気づきプチ自己嫌悪。さまざまな気付きを与えてくれた。
それにしても立派なおっぱいであり、打ち合わせが始まり、「どうぞお掛けください」と着席を進めると、「ありがとうございます」と言いながら着席したとたんにおっぱいを机の上に乗せるのだ。あろうことか毎回毎回。ある日その様子を視界の端で捉えながら強烈なデジャヴに襲われて、「これは・・・」自問自答した所たどり着いたのは、漁師が船の上から投げかけた網の様子であった。荒れ狂う大海原に解き放たれる一帖の網。かび臭い会議室に居ながらも、広大な気分を味あわせてくれたものだ。
そんな担当が辞めるという。
 
最後の打ち合わせの中で、ひとしきりこれまでの感謝の言葉を並べ、今後のご活躍をお祈りする等したが、辞める理由まではさすがに聞けなかった。少なくとも結婚ではないようだ。とすれば、転職か。仕事の出来る方なので、制約だらけの現会社から飛び出したくなったのもうなづける。だが、所詮それも憶測の域を出ない。
 
取引先というものは不思議なもので、何か問題など起こるたびに、1日に何度も連絡を取り合い、それこそ家族よりも恋人よりも身近であるような錯覚に陥る。
しかしひょうな拍子でもう二度と会わないであろうことになる、考えれば奇妙な関係である。所詮一時的な繋がり。そう言ってしまえばそれまでだが、その中でも真摯な振る舞いを持とうと自分を律する人もちゃんといる。いかなるコンディションであっても常にその姿勢を保とうとするのは非常に困難であるにも関わらず、しっかりと貫いている人もいる。
それこそ一期一会の精神なのだろうと思う。